こんにちは、事業会社でマーケティングの仕事をしているyukijiです。
今回はマーケティング戦略を立てる上で欠かせない「リサーチ・調査」のやり方や具体例をご紹介いたします。
・マーケティングリサーチとは何か、基本ややり方を知りたい
・調査をしたいけどお金がかかりそうで手が出せない
・具体的にどんなリサーチの事例があるのか知りたい
本記事では、主なマーケティングリサーチの手法から、マーケティングリサーチの企画~調査票作成・実査~分析の流れとポイントを解説します。
全体的なマーケティング戦略の立て方を知りたい方は以下の記事も合わせて読んでみてください。

マーケティングリサーチとは
企業のあらゆるマーケティング課題に対して、意思決定をサポートするための調査・分析のことです。もっとシンプルにいうと「顧客を理解すること」とも表現することができます。
マーケティングは仮説で話を進めることがありますが、調査をして仮説の信頼性を高めたり微調整をしていくことで、施策成功確率を上げることができます。
例えば、以下のような疑問に対して調査をすることで答えに近づくことができます。
- 自社の商品やサービスは、どんな人をターゲットとすべきなのか?
- 自社の商品やサービスは、利用者に満足されているのか?
- 新商品の価格はいくらにすべきなのか?
- 自社商品と競合商品ではブランドイメージはどう違うのか?
- 実施したキャンペーンやイベントの効果はどの程度あったのか?
マーケティングリサーチを行う上でのポイント
マーケティングリサーチには大きく2つの種類があります。
- 定量調査:「回答数」「人数」「割合」などの数的データを収集し分析する調査手法
- 定性調査:「発言」「行動」など数字で表せない質的データを収集し分析する調査手法
マーケティングリサーチでは、この2つの調査をどちらも行い総合的に顧客を理解することが重要です。
顧客理解は、膨大な事実データを集めるだけで理解ができるわけではありません。日常で誰もが行なっている「他者理解」と同じように、総合的な情報をもとに解釈をしなければ理解をすることは難しいです。
人間は思った通りの言動をするわかりやすい生き物ではないよね
マーケティングリサーチの手法
マーケティングリサーチは、前述の通り「定量調査」と「定性調査」の2つに大きく分かれます。それぞれに適した手法があります。
定量調査:インターネット調査
調査対象者にインターネット上の調査フォームで回答してもらうアンケート調査です。定量調査の中では最も多く利用される調査です。コストが安く、短期間で調査が完了し、比較的手軽に実施することができます。
※ちなみに調査会社が持っているアンケートモニターは、基本的にはアンケート回答の謝礼であるポイントを目的として活動しているということも認識しておく必要があります。
画像引用;マクロミルモニタサイト
定量調査:会場テスト(CLT)
会議室などの事前に準備された会場に調査対象者を集めて行うアンケート調査です。
調査員が立ち会うことができ、その場で深堀の質問をすることも可能です。
試飲・試食など商品テストや、放映前の広告クリエイティブの評価など、秘匿性の高いものを扱う場合にも利用されます。
定量調査:ホームユーステスト(HUT)
調査対象者の自宅に試用品を送付し、一定期間試用してもらった後に、使用感や感想などをアンケートで回答してもらう調査です。実際に普段の生活で使用する環境で試用・評価してもらうことが可能です。
定量調査:パネル調査(継続調査、定点調査)
同じ調査対象者から、同じ項目のデータを継続的に収集する調査です。顧客の行動の変化を時系列的に取得することができます。具体的に以下のような調査があります。
- 消費者パネル調査:同じ調査対象者にバーコードスキャナーを貸与し、購入した商品を記録し続けてもらう調査。
- 小売店パネル調査:同じ調査対象店舗からPOSデータを収集し続ける調査
定性調査:デプスインタビュー
インタビュアーと調査対象者が1対1でインタビューを行う調査です。1対1で行うため、調査対象者の心を開き、個人的な体験や心の内を深く聞き込む場合に向いています。あまり長くやり過ぎても集中力が切れてしまうので、1時間程度で行うケースが多いです。
定量調査:グループインタビュー(FGI)
数人の調査対象者を集め、座談会形式でインタビューを行う調査です。参加者同士が会話の中で刺激し合うこと(グループ・ダイナミクス)で発想を広げたり、議論を深めたりすることが可能です。
人数は大体4〜8名で、2時間程度をかけて行うケースが多いです。
マーケティングリサーチの流れ
マーケティングリサーチは、企画、調査設計、実査、分析の流れで行います。それぞれの工程についてご説明いたします。
企画
調査の目的、仮説、予算などを設定し、調査を企画します。社内で稟議を上げる際などはこの段階で申請することになるかと思います。
調査設計
調査を実施するにあたり必要な以下のような情報を決めます。
- 調査体系(どの種類の調査を採用するか)
- 調査対象(誰に調査をするか)
- 質問項目
実査
実際に調査を行います。定量調査はシンプルなものが多いですが、定性調査ではこの実査のフェーズが非常に重要です。
例えば、グループインタビューでは、参加者同士で割と自由な議論に走りがちですので、モデレーターがきちんと話の方向性を正しくしてあげないと無駄な議論が繰り広げられ時間を無駄にしてしまうこともあります。
マーケティングリサーチの成功事例
実際にマーケティングリサーチを行なって、成功している事例を知るとイメージが湧きやすいと思います。既に大手メディアに取り上げられている内容ですが、成功事例を拾ってきたのでご紹介します!
アサヒビール/ドライゼロ
調査目的:
- ノンアルコールビールの飲用状況、ニーズの把握
- 競合ブランドのイメージ測定
- 複数の試作品、パッケージ案からの採用案選定
調査手法:インターネット調査、グループインタビュー、モニター調査
健康志向や飲酒意識の変化などを理由に急拡大を続けるノンアルコールビール市場。アサヒビールは2010年に「ダブルゼロ」で参入したもののシェア2%と低迷しました。しかし2年後には「ドライゼロ」を発売、これがシェア24%を超える大ヒットとなりました。
その成功を支えたのがマーケティング・リサーチです。延べ5000人以上を対象にインターネット調査とグループインタビューを実施。ノンアルコールビールに対して、カロリーゼロといった機能性よりもビールに近い味を求めている人が多いことを突き止め、味に絞った新商品開発を進めたそうです。そして調査結果を見て、ターゲットも「ビールを飲まない層」ではなく、「ビール愛飲者」に設定。使い分けや休肝日を利用シーンに想定したと言います。最後は複数の試作品を作成、パッケージも複数作成し、モニター調査の結果によって採用を決めるなど、徹底した調査主導の新製品開発です。
参考文献:「ドライゼロ」ヒットを支えた社内コンペ/日経XTECH
セブン&アイホールディングス/金の食パン
調査目的:商品開発
調査手法:アンケート調査
日本におけるパンのマーケット全体では主に主食系パンと、それ以外の味付け系パンに二分されます。この二つの分類において規模は同じくらいなのですが、セブン&アイホールディングスの食パンのシェアは大きくありませんでした。そこで「安くてリーズナブルなイメージを覆すような”価値”を追求する」というコンセプトで新たな食パンを開発することになりました。
この判断には野村総研株式会社の「生活者一万人のアンケート調査」を精査したそうです。
・最初のリサーチは同社の「プレミアム生活向上委員会」という組織を使い、約 200 名の消費者を対象に「金の食パン」と既製品の商品を食べ比べてもらい、どちらが美味しいのかをヒアリング。すると、約7割の消費者が「金の食パン」の方が美味しいと答えました。
・さらにこの結果に満足せず、同社は神奈川のセブンイレブンの店舗でテスト販売を開始。テスト販売の目的は売れ行きと価格の妥当性でした。
テスト販売の結果は、売り上げでは店内プロモーションの影響もあり、最も売れた店舗では 1 日に 133 個も売れ、価格も 1 斤 250 円で決定しました。最後に全国の商品展示場で試食テストを試みた結果、「金の食パン」が一番美味しかったという回答が一番多かったのです。
この慎重におこなったマーケティングリサーチがあったからこそ、「金の食パン」が有名な商品となりました。
参考文献:PB商品「金の食パン」が高くても売れる理由/PRESIDENTonline
まとめ
ここまで説明してきましたが、マーケティングリサーチは個人的に非常に難しいと勝手に思っています。でもとっても重要なので、できるチャンスがあれば絶対に成功させたい!大変ですが、企画・設計の準備を完璧に行うことでより良い調査結果が得られるはずです。頑張りましょう!